雨色DAYS


図書室に入ると、人はあまりいなかった。
窓際の席が空いていたので、適当に本を選んで座った。
あまり本を読む習慣がないわたしは、数ページ読んだところで飽きてしまった。
「違うのにしよう」
椅子から立とうとして、見知った顔をみつけた。
葉山くん?
葉山くんはいつも自分の席で本を読んでいるもの静かな、わたしと同じクラスの生徒だ。
成績優秀で、試験ではいつも上位の方に名前があった。
どんな本読んでるのかな。
少し興味が湧いてきた。
「あの…葉山くん」
葉山くんは本から顔を上げてわたしの方を見た。
「あんた誰?」
え?
もしかして、同じクラスだってこと気づいてない?
「わたし、同じクラスの望月志乃」
「望月さん?」
しばらく考え込んでいたようだが、
「ああ、いつもバスで一緒になる人だ」
「え?バス停?」
わたし、葉山くんと同じバスだったの?
「いつもスマホ見てるから、気づかなかったでしょ?」
うちの学校で、あのバスを使っているのはわたしだけだと思っていたが、まさか葉山くんまで使っているとは思わなかった。
「同じバスだったんだ。気づかなかった」
「あ」
葉山くんが窓の方を見ている。
「雨、上がったみたいだよ」
窓を見ると、真っ赤な夕日が広がっていた。
「もう遅いし、早く帰ったほうがいいよ。じゃあ僕も帰るから」
「あの、さっき読んでた本、何読んでたか今度教えてくれる?」
「本のこと聞きたいんだったら、一緒に帰る?」
「え?いいの?」
「どうせ同じバス乗るんだし」
「ありがとう」
私は葉山くんの後を追いかけた。
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