婚約破棄したい婚約者が雇った別れさせ屋に、何故か本気で溺愛されていました
34. 大切な方々だけにお祝いしていただきたいの
――婚約式の後四十日間の婚約提示期間を経て、アルフォンスの強い希望もあり、私はすぐに結婚式を行うこととなったのです。
「まあヴィオレット、とても綺麗よ」
「フォスティーヌ夫人、どうもありがとうございます」
「絶対に幸せになるのよ。貴女はマリーズに守られているのだから、大丈夫よね」
「はい。お母様や夫人、辺境伯様がいらっしゃいますから。私は大丈夫ですわ」
花嫁の控室で、涙目のフォスティーヌ夫人が私のベールを下げてくださいました。
あれからブラシュール伯爵家は爵位没収となり、領地は一旦国の預かりとなっております。
私はブラシュール伯爵令嬢からモンジュ公爵令嬢となり……養女にしてくださったフォスティーヌ夫人は本物の母となったのです。
「すぐに結婚して平民となってしまうから寂しいけれど、それでも貴女を一時でも本物の娘にすることができて、とても幸せだったわ」
そう言って笑うフォスティーヌ夫人は、花嫁である私よりもずっと美しかったのではないでしょうか。
――ステンドグラスが美しい教会。
その前にある厳かな説教台の前で、私とアルフォンスは結婚いたしました。
公爵令嬢と大商会の会長という二人にしては、随分と小さな結婚式だったと思いますわ。
レオナール辺境伯様、フォスティーヌ公爵ご夫妻、あとは商会の主だった従業員たちに祝福されて、私とアルフォンスは夫婦となったのでございます。