【短編】虹色に願う放課後
「あーあ、やくもんのせいで狂犬になった」

「いやそれこっちのセリフ。ななせんのせいで凶暴になった」

「は? ななせん?」

「そうよ。私がやくもんなら、あなたはななせん」

「はー? それだと数字じゃん。ぬ足してななせんぬって呼んでよ」

「1人だけオシャレに言い換えないでよ。そもそもあんた日本人でしょ」



今度はあだ名で口論。

ハッと我に返って見上げた時には、熊か犬か判別できないほどに崩壊していた。








「じいちゃんとばあちゃんちに、ピー太って犬がいたんだよ。真っ白でモフモフしてて超おっきくて。あ、これこれ」



来た道を戻りながら写真を見せてもらう。

お座りする白い犬の隣に、幼い七瀬くんが膝立ちして笑顔を浮かべている。


確かに白くてモフモフ。あとすごいよだれ垂れてる。カメラの近くにおやつでもあったのかな。



「可愛い。けど、画質悪いね」

「しょうがないよ、じいちゃんのケータイで撮ったやつだから。もう10年以上も前のだし」
< 24 / 43 >

この作品をシェア

pagetop