【短編】虹色に願う放課後
話によると、小学生なりたての頃に撮ったという。



「園児かと思った。ランドセル背負ってたんだね」

「そんな小さく見える? これでも背の順は真ん中のほうだったんだけどな」

「ワンちゃんが大きすぎるのよ。怖くなかったの?」

「んー、デカいなとは思ってたけど、物心つく前から会ってたらしいから。しつけもちゃんとされていたし、おとなしかったし。夢でもいいからまた会いたいなぁ」



ポロッとこぼれた胸の内。曇り空を遠い目で見つめる切なげな横顔。

思い出がたくさんあるなら、そりゃ意固地にもなるか。


住宅街の入口まで送ってもらい、彼と向かい合わせになる。



「急に変えちゃってごめんね、ありがとう」

「いえいえ。こっちも探検できて楽しかったし」

「1人で帰れる? 近くまで送ろうか」

「大丈夫。まだ明るいし」

「そう。怖くなったら呼んでね。光の速さで駆けつけるから。雷だけに」

「結構です」



最後にクスッと笑った七瀬くん。ではなく、性悪プリンスくん。

からかわれたのに、さほど頭にこない。
それどころか、なぜか寂しく感じる。

──多分これは、1人での帰り道が心細いからだ。
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