【短編】虹色に願う放課後
30分前までは全席埋まっていたのに。みんな早いなー。そしてちゃんと時間守ってて偉い。


カウンターも見てみたが、こちらも同じくガラ空き。どうやら私が奥で作業してる間に帰ったみたい。


現時点で残っているのは、本を棚に戻す女子生徒が2人と、荷物をまとめる男子生徒が1人。

あとは先生と、図書委員の私と──。



「ごめん八雲さん、急なんだけど、戸締まりお願いしてもいいかな? さっき子どもから、『迎えに来て』って連絡が来ちゃって」

「いいですよ」



二つ返事で了承し、鍵を受け取った。

小走りで図書室を後にする先生を見送り、部屋全体をぐるりと回る。


床よし、本棚よし、ゴミも忘れ物もなし。


隅々まで点検してパッと顔を上げると、先ほどまでいた3人の生徒は全員退室していた。


……声を、かけたほうがいいよね。


窓際に向かい、鍵の確認をしつつ横目で様子をうかがう。


頬杖をついて空を眺める端正な横顔。

誰もが1度は目を留めてしまうくらい美しいけれど、どこかもの悲しげで。今は気だるさよりも儚い雰囲気をまとっている。
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