【短編】虹色に願う放課後
『これ面白いね。レジの人になった気分』

『わー、見て見て。水たまりが虹色になってる』

『大丈夫、もし落ちたらこの傘で守ってあげるから』

『見て見て! おっきい犬がいる!』

『怖くなったら呼んでね。光の速さで駆けつけるから』



瞳に映る虹色が涙でぼやけ、唇を噛みしめる。

やだ、なんで私っ、雷も鳴ってないのに……っ。



「この時間が、ずっと続けばいいのにな」



込み上げてきた涙を乾かす横で、七瀬くんが呟いた。



「なんてね。そんなこと願ったらみんなが困っちゃう」



口を挟む隙も与えず、「先生にも知らせてくる」と席を立って奥の部屋に向かった。


その後、駆けつけた先生と一緒に彩雲を眺め、勉強を再開。

閉館時間まで粘ったものの、結局真意は聞けず。
「テスト頑張ろうね」と挨拶して別れた。


──連絡は、来なかった。


テストの前も、期間中も、終わった後も。

ほぼ毎日やり取りしていたチャット画面は、彩雲を見た金曜日で止まっていて。


あれだけ訪れていた図書室にも、姿を見せなくなった。
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