【短編】虹色に願う放課後
「……残念だけど、まだ全部叶ってないよ」

「は? なんで。どう考えても叶ってるじゃん」

「いいえ。あなたも含まれてるでしょ──家族“みんな”の中に」



真っ直ぐ目を見て答えると、黒い瞳が揺れた。

王子様キャラでいつも余裕ぶっこいてる彼が──初めて、動揺した。



「七瀬くん、私ね、あなたのオタトークを聞いてたら、ハマっちゃったの」

「……何にハマったの」

「“コトダマ”」



また、揺れた。

目を泳がせる彼に近づき、やや上目遣いで迫る。



「迷信好きでオカルトもいけちゃう七瀬くんが、この意味を知らないはずないよね?」

「っ……でも、今更言ったって……」

「そんなのわからないよ⁉」



弱気になっている彼の肩をガシッと掴む。


叶うか叶わないかなんて、言ってみなきゃわからない。


だってそうでしょう? 彩雲探しだって、七瀬くんが誘ったから実現したんだよ?

もしそこで怖気づいて黙ってたら、図書委員と常連さんの関係のままだったんだよ?


七瀬くんが勇気を出して、きっかけを与えてくれたから。

だから私達、こんなふうに仲良くなれたんだよ……?


小刻みに揺れる瞳を見据え、再度口を開く。



「七瀬くん、あなたの本当の願いは何?」

「っ……俺は──」
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