【短編】虹色に願う放課後
「じゃじゃーん!」と、寄せ書きが集まった色紙を見せてきた。


図書室で噂を耳にしたあの日──。



『七瀬くん、あなたの本当の願いは何?』

『っ……俺は、みんなとの思い出が欲しい』



家族全員が幸せになるために、自分自身が幸せになることを諦めていた七瀬くん。

校舎裏で問い詰めて、抑え込んでいた望みを吐き出させた。



「同じ人間でも、こんなに筆跡が違うんだね。誰? 筆ペンで書いたの」

「現文の多実子ちゃん。あの人書道6段だから」

「へぇ〜、どうりで黒板の字が達筆だったわけだ。っていうか下の名前で呼んでるのね」

「うん。同じ名字の先生が他にもいるらしいから。あらら? 妬いた?」

「妬いてません。馴れ馴れしいなと思っただけ」



ジト目を向けるも、クスクス笑っている。


1年の頃からの担当でも、そこはちゃん付けじゃなくて先生と呼びなさいよって思っただけ。

下の名前で呼ぶくらい仲良しだからって、あっちは一回り以上年が離れてるんだし。別に羨ましくなんか……。



「で? いつ引っ越すの?」
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