【短編】虹色に願う放課後
見た感じ、イヤホンは付けてないから、無視はされなそうだけど……緊張するな。


雨粒が流れる窓から視線を移し、そっと近づく。



「あのー……もう、閉館なんですけど……」



申し訳なさそうな空気を出しながら、恐る恐る声をかけた。

雨音にかき消されないか心配していたが、耳に届いていたようで、彼の顔がゆっくりとこっちを向く。



「いきなりすみません。ここ、6時までなんです。なのでそろそろ……」

「あぁっ、そうなんですか? すみません、すぐ出ますね」



目を丸くした後、慌てて席を立った。


低くも透き通った、聴いていて心地のよい声。

とろけそうな甘々イケボ、というよりかは、癒やされる、落ち着くって感じ。

本の読み聞かせをしたら、100パーみんなの眠気を誘いそう。



「あのっ、お兄さんは、いつもここで何をしているんですか?」



安心感から気が緩み、思わず尋ねてしまった。
スクールバッグを肩にかけた彼と目が合う。



「えっと……私、1年の頃から図書委員やってるんですけど、その頃からお兄さんの姿を何度か見かけたことがありまして」
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