【短編】虹色に願う放課後
情報量の多さと話すスピードについていけず、目を点にする。


えーと、よく図書室に来ていたのは、虹色の雲を探すためだった。

で、その雲は幸運の到来という意味があって、縁起がいいとされていて、主に晴れてる時に出る現象、だったっけ? 


あとは……。



「では僕はここで。また来週会えたらいいですね」

「え、あっ、はい」



気づいたら1階に着いていた。

頭の中がまとまらないまま、彼は「お先に失礼します」と言い残して昇降口へ。

しーんと静まり返った廊下に雨音が響く。


みんなの憧れの王子様と、一対一で会話。

クラスメイトやファンならまだしも、他クラスで特別ファンでもない初対面の人間。


こんな感想、ファンの人が知ったらボコボコにするよね。それに必ずしも彼の本性とは限らない。


だけど、少なくとも私には。



「どこが王子様だよ……」



王子様要素がひと欠片もない、強オタファンタジーボーイにしか見えなかった。
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