【短編】虹色に願う放課後
……しまった。まだ自己紹介してないのに。



「すみません、よく校内で名前を聞くので……」

「大丈夫ですよ。覚えててくれてありがとうございます、八雲さん」



え? と、今度は自分が目を丸くした。



「私のこと知ってるんですか?」

「はい。1年の頃から通ってますし。委員会がない日もよく来てるのを見かけてたので」



わわわ、学園の王子様に認知されていたなんて。

ちょっ、これ大丈夫かな。明日から罵声の嵐が始まるとか勘弁してほしいんだけど。



「僕も心理学や自己啓発の本ですかね。あとは占い雑誌とか、空の写真集とかを見ます」

「へぇ〜、幅広いんですね〜」



周囲に注意を向けつつ、今日借りる予定の本を見せてもらった。


潜在意識の本と幸運を引き寄せる方法の本。
……残念ながら、先週見た早口オタトークは幻ではなかったようだ。


なるほど。活動的なのは日中だけで、放課後以降はボーッとしてバランスを取るタイプなのね。

というか、こういうジャンルの本が置いてあるの知らなかったよ。
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