エフェメラ
「お父さんへ。お元気ですか。先日、大学の合格発表があり、無事、合格しました!日々、養育費を送ってくれてありがとう。高校の卒業式も終えて、四月から私も大学生にだって。大学は関西の方だから、お父さんの住む東京と近い茨城に住んでいる間に、二人で会って話したいな。もし都合が良ければ、来週の土曜日、二十三日に水戸の偕楽園で梅の花を見ようよ。水戸駅の改札の前で、午前十時に待っています。もし来られなかったら、一人で行くから大丈夫。またね。ゆっくりお返事待ってます。あやめより」
 娘の持っている芯の強さは、一体誰譲りなのだろうかと手紙を読んで思った。娘の女の子らしい丁寧な字は、もう俺の知っている娘の字ではなくなっている。
 今まで、ずっと娘に会いたかったが、離婚している手前、自分から誘うなんて虫のいいことはできなかった。娘からの誘いは初めてのことで、胸躍る反面、不安もあった。
 土曜日に仕事はなく、東京から水戸までは特急で二時間もしない。朝八時の特急に乗れば十時までに水戸駅に着く。
 娘に会える日を指折り数えて、そわそわしながら土曜日まで過ごした。
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