アンニュイな偽カレに、愛され注意報⚠︎ (短)
はじまり



アンニュイって、どういう意味だっけ。

きっと黄昏れるとか、そういう感じの。

ちょっとシットリした感じのことをいうんだよね。



「あ、出た出た」



電子辞書の画面に浮かぶ「アンニュイ」の文字。



「ふーん、儚くてミステリアスってことかぁ」



そして辞書から顔を上げた時、一人の男子が目に入った。

窓越しに降る雨を丁寧に1粒ずつ見ているようだ。

私は、それを見て思わず。



「アンニュイだ」



覚えたての言葉を呟いた。



☂ °



同じクラスの男子に、一際目を引くイケメンがいる。

名前を時瀬(ときせ)くん。

茶色の髪に切れ長の瞳、薄い唇に高い鼻。

手足は長く、かと言ってひょろひょろしているわけではなくて。ほどよく筋肉がついており、その姿は正しく男の子。

そんなイケメンを女子が放っておくわけなく、時瀬くんは今日も今日とて女子に囲まれていた。



「毎日毎日、女子もよく飽きないねぇ。というか、いちくんの忍耐力がすごいのか」
< 1 / 24 >

この作品をシェア

pagetop