アンニュイな偽カレに、愛され注意報⚠︎ (短)

「今まで女子とか恋とか分かったつもりでいたけど、俺って全然だったなって思い知ったところだよ」

「そんなことないと思うんだけど……」

「彼女に振られ続けるのに?」

「(そう言われると……)」



言葉に詰まった私を見て、眉を下げたまま時瀬くんは再び窓に目をやった。しかめっ面で、雨粒を見ている。



「嫌いだよ、雨なんて。俺の儚い雰囲気が助長されるのか、梅雨の時期は毎年フラれるんだ」

「じゃあ付き合って一年以上続いたことは?」

「ないね。俺の最大の恋敵がいるとしたら、それは梅雨しかないと思ってる」

「へ、へぇ」



真面目な話なのか、そうでないのか。

どちらとも分からない空気になってきたから、席に戻りカバンを持つ。もちろん次に出てくる言葉は「じゃあ私はこれで」だ。

そう決まっていたのに。



「どこ行くの」



パシッと、時瀬くんに掴まれる私の腕。素早い動きに「ひっ」と、悲鳴にも似た短い声が出た。
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