アンニュイな偽カレに、愛され注意報⚠︎ (短)
「雨も降ってる事だし、帰ろうかと」
「雨降ってるなら、普通は雨宿りするでしょ。梅雨だし止みそうにはないけどさ。でも、それよりも。
さっき俺が言ったこと覚えてる?」
「さっき……」
『俺に恋を教えてくれない?』
あぁ、そういえば。
だけど無理です、ごめんなさい。
だって私、付き合った人はおろか、好きになった人もゼロ人ですもん。
素直に言うと、時瀬くんは「好都合だよ」と機嫌よくカラカラ笑った。
「俺って既に、色々な恋を知っちゃってるからさ。知識がない沢井さんから改めて教われば、本当の恋を見つけられると思うんだ」
「そんな希望を持たれても、私は少女漫画ていどの知識しかないよ?」
「少女漫画って女の子の夢や憧れが詰まってるって言うじゃん。なら、恋を知るにはちょうどいいよね」
「(な、何がなんでも私に教わる気だ……!)」
そんなに「羨ましい」って言ったことを怒ってるのかな?
もしかして時瀬くんって、けっこう根に持つタイプ?
「今さら謝っても、」
「うん。もう遅い」
ニコッと笑った顔は、女子のみんなが虜になる顔。これで何人の女の子を落としてきたんだろう……。
あぁ、私の中の「時瀬くん像」が、どんどん塗り替えられていく。