アンニュイな偽カレに、愛され注意報⚠︎ (短)
霞(かす)むアンニュイ

「アンニュイって……どういう意味だっけ?」

「さっき自分で辞書を引いてたでしょ?」

「そうなんだけど……時瀬くんを見てたら、アンニュイってイメージがぼやけてきて。また意味が分からなくなっちゃった」

「!」



確かに、時瀬くんが窓を見てる時は「何考えてるんだろう」とか「儚げだ」とか思ってたけどさ。

蓋を開けてみれば、時瀬くんは「愛だの恋だの」言って、恋愛経験値ゼロの私に助けを求めて(?)きたし。

絶対ムリって断っても、少女漫画の知識でOK、バッチコイなんて言うし。まさか時瀬くんが、こんなにスポコンだったなんて思わなかったよ。

すると時瀬くんが、遠慮がちに肩の高さまで右手を挙げる。



「ねぇ。今の俺って、沢井さんにどう写ってる?」

「んー、目の前に赤い布を出された闘牛かな」

「闘牛……?」



反復した後、固まった時瀬くんをしり目に。私は窓の向こうの雨雲を見た。



「雨、止みそうにないね。時瀬くんは傘ある?って、あるに決まってるか。朝から降ってたもんね」



言うと、時瀬くんが首を振る。
え、まさか傘ないの?



「朝はどうやって来たの?」
< 12 / 24 >

この作品をシェア

pagetop