アンニュイな偽カレに、愛され注意報⚠︎ (短)
霞(かす)むアンニュイ
「アンニュイって……どういう意味だっけ?」
「さっき自分で辞書を引いてたでしょ?」
「そうなんだけど……時瀬くんを見てたら、アンニュイってイメージがぼやけてきて。また意味が分からなくなっちゃった」
「!」
確かに、時瀬くんが窓を見てる時は「何考えてるんだろう」とか「儚げだ」とか思ってたけどさ。
蓋を開けてみれば、時瀬くんは「愛だの恋だの」言って、恋愛経験値ゼロの私に助けを求めて(?)きたし。
絶対ムリって断っても、少女漫画の知識でOK、バッチコイなんて言うし。まさか時瀬くんが、こんなにスポコンだったなんて思わなかったよ。
すると時瀬くんが、遠慮がちに肩の高さまで右手を挙げる。
「ねぇ。今の俺って、沢井さんにどう写ってる?」
「んー、目の前に赤い布を出された闘牛かな」
「闘牛……?」
反復した後、固まった時瀬くんをしり目に。私は窓の向こうの雨雲を見た。
「雨、止みそうにないね。時瀬くんは傘ある?って、あるに決まってるか。朝から降ってたもんね」
言うと、時瀬くんが首を振る。
え、まさか傘ないの?
「朝はどうやって来たの?」