アンニュイな偽カレに、愛され注意報⚠︎ (短)
「どういう所?」
「自ら折りたたみ傘を選ぶところ。折りたたみって、小さいから嫌じゃない?」
「だって、時瀬くんの方が体が大きいし」
私は折りたたみ傘でおさまる体だから――と返すと、時瀬くんは無造作に私の頭を撫でた。
「まぁ、そりゃね。
俺の方が体が大きいって、当たり前だよ。
だって俺、男だもん」
「……うん?」
男だもん、と言われた途端に、時瀬くんと私の体の大きさを比較してしまう。
教室から移動して、現在は下駄箱。
そして校舎を出て、運動場の端っこを歩いている。
今が夢か現実か分からなくて、思わずチラリと隣を見る。
軽々と握られる傘の柄。
私よりも高い位置でさされる傘。
袖の下に隠された筋肉質な二の腕が、雨粒にあたったことで遠慮がちに透けている。
全部全部、私にはないものばかり。
うん。時瀬くんは、男だ。
「おーい、どうしたの沢井さん?」
「なんでも、ないです」
「なんで敬語?」
首を傾げる時瀬くんとは逆の方向へ顔を向け、私の動揺を悟られないようにする。
思えば、顔面偏差値の高いイケメンと一緒に帰るって。私の人生において、とんでもない非常事態だ。
それに自分とは違う「男の子」だと認識してしまったし。あぁ、そう思ったら最後。途端に異性の壁を感じて、ギクシャクした動きになってしまう。
「自ら折りたたみ傘を選ぶところ。折りたたみって、小さいから嫌じゃない?」
「だって、時瀬くんの方が体が大きいし」
私は折りたたみ傘でおさまる体だから――と返すと、時瀬くんは無造作に私の頭を撫でた。
「まぁ、そりゃね。
俺の方が体が大きいって、当たり前だよ。
だって俺、男だもん」
「……うん?」
男だもん、と言われた途端に、時瀬くんと私の体の大きさを比較してしまう。
教室から移動して、現在は下駄箱。
そして校舎を出て、運動場の端っこを歩いている。
今が夢か現実か分からなくて、思わずチラリと隣を見る。
軽々と握られる傘の柄。
私よりも高い位置でさされる傘。
袖の下に隠された筋肉質な二の腕が、雨粒にあたったことで遠慮がちに透けている。
全部全部、私にはないものばかり。
うん。時瀬くんは、男だ。
「おーい、どうしたの沢井さん?」
「なんでも、ないです」
「なんで敬語?」
首を傾げる時瀬くんとは逆の方向へ顔を向け、私の動揺を悟られないようにする。
思えば、顔面偏差値の高いイケメンと一緒に帰るって。私の人生において、とんでもない非常事態だ。
それに自分とは違う「男の子」だと認識してしまったし。あぁ、そう思ったら最後。途端に異性の壁を感じて、ギクシャクした動きになってしまう。