アンニュイな偽カレに、愛され注意報⚠︎ (短)
「なんで手と足が一緒に出てるの?」
「き、気のせいだよ」
ねぇ時瀬くん。やっぱり私が「恋を教える」なんて無理だよ。だって私ってば、並んで帰るだけでいっぱいいっぱいなんだよ?
……そんな私を知ってか知らずか。
時瀬くんは「あのさ」と。
傘の柄を持つ私の手に、自分の手を重ねた。
「な、なんで手を握るの?」
「そんなの決まってるよ。
絶対こっちを振り向いてもらいたいから」
「!」
ほら、こんなこと言われたらダメだ。
少女漫画以上のことを経験してる気がする。というか……今更ながら、少女漫画のヒロイン達を尊敬する。
イケメンヒーロー達から、こんなドキドキのコンボを繰り出されて、気が気じゃなかっただろうに。いつも紙面越しに、ニヤニヤしてごめんなさい。
「――ってわけだから。聞いてる?沢井さん」
「え、なに?」
「だから」
濡れたアスファルトの上を、力強く踏み込んだ時瀬くん。彼の足元から、ぴしゃんと高い音が鳴った。その音は二人の間でまたたき、そして儚く消えていく。
時瀬くんが衝撃的な発言をしたのは、まさにその時だった。