アンニュイな偽カレに、愛され注意報⚠︎ (短)
「わ、邪魔してすみません!」
「ほら、時瀬くんなわけないじゃん!お邪魔しましたー!」
女子は足を揃えて走り去る。
その音に安心するはずなのに、胸のドキドキは鳴り止まない。……当たり前だ。だって時瀬くんに強く抱きしめられているんだから。
「と、時瀬くん。もう行ったよ?」
「……」
「時瀬くん?」
離れようにも、力が強すぎて動けない。体をひねっても、足を動かしても……彼の腕の中で、ただ私はもがくだけ。
『だって俺、男だもん』
このセリフを、まさか身に染みて体感する日が来るとは。
あわわわ、と目を回していると、時瀬くんはやっと体を離してくれた。かと思えば「こういうことか」と、何やら考え込んでいる。
今ので、何か得る情報があったなら教えていただきたい――なんて思っていると。時瀬くんは、私が落とした折りたたみ傘を拾って、こちらに差し出した。
衝撃的な言葉と一緒に。