アンニュイな偽カレに、愛され注意報⚠︎ (短)
「俺の彼女って……仮!仮だからね!」
「そうそう、仮ね。そんなに熱く語らなくても」
「一番重要なところだもん!熱く語らせて!」
「俺の彼女は熱血だなぁ」
「仮の彼女ね!」
時瀬くんの(仮)のつけ忘れを全て訂正していたら、かなり疲れる。もはやわざとじゃない?ってくらい、時瀬くんは私に向かって「仮の彼女」と言わなかった。
「もしかして時瀬くん、楽しんでる?」
「……ちょっとね」
勢いよく傘を揺らして、乗っていた雨粒を豪快に落とす時瀬くんは、それはそれは意地悪に見えて。
「それで?雨の中、彼氏彼女が二人で帰る時。少女漫画では、どう言った流れになるの?」
「えっと……って。
少女漫画の内容を話す=私の性癖を暴露するってことにならない?」
「いいじゃん。彼女の事なら、どんな些細な事でも知りたいよ。俺は」
「っ!」
「はは、顔が真っ赤だ」
カラカラと笑う姿から、もう「アンニュイ」なんて言葉は浮かばなくて。もっと言うと、少女漫画の世界にいる現実離れしたイケメン、とも思わなかった。
だって、隣にいる彼は、こんなにも――