アンニュイな偽カレに、愛され注意報⚠︎ (短)
君からの注意報
「わ、笑わないでね?」
「もちろん」
傘をパチンと閉じ、時瀬くんに近づく。いきなりの事なのに、時瀬くんは私を傘にいれ、濡れないように傾けてくれた。
「少女漫画の世界では、使う傘は一本。それで互いの肩を、当たるくらい引っつけるの」
「二人が濡れないように?」
「うん。離れてる肩がたまに当たったりするのが、ドキドキするから」
「ふーん。こう?」
トンッ、と。時瀬くんは私の肩に、自分の肩をくっつけた。すると触れたところが、ジワジワ温かくなってくる。
トン、トンッと。何度も繰り返すうちに、私の喋る回数が減っていると見抜いた時瀬くん。私の胸の内を知ってるくせに、わざわざ顔をのぞきこんで聞いてくる。
「ね、ドキドキした?」
「……っ」
ほら。やっぱり。
もう時瀬くんを見ても、アンニュイなんて言葉は頭をかすりもしない。だって彼はこんなにも意地悪で、積極的だから。
「私をからかってる……っ」
「あ、バレた?」
こんなに楽しそうな時瀬くんの顔を見れば「いま何を考えているのか」なんて、ハッキリ分かっちゃうよ。