アンニュイな偽カレに、愛され注意報⚠︎ (短)
トンッ
「っ、また!」
「だって誰かさんが傘をしまうからさぁ、濡れないように近づかないと。ね?」
「〜っ!」
時瀬くんはアンニュイでもミステリアスでも、儚くも、少女漫画のヒーローでもない。
ちょっと意地悪で積極的な、私の偽カレ。
夢物語の人物じゃなくて、現実にいる人。
「時瀬くんって本当に存在するんだね」
「教室にいる俺を幽霊とでも思ってたの?」
「漫画の中から出てきたのかと思ってた。かっこよ過ぎて、妙に現実味がなくてさ」
「……」
すると空いた手に、ギュッと力強い感覚がまとう。見ると、時瀬くんが私の手を握っていた。しかも、これ……恋人繋ぎ!
「え、そ、そこまでしなくても……っ」
「なんで?彼氏彼女なんだから、これくらい良いじゃん。それより、確認できた?」
「なにを?」
すると時瀬くんは、繋いだ手を自分の口へ持っていく。そしてチュッと、軽く口付けた。