アンニュイな偽カレに、愛され注意報⚠︎ (短)
「(っていうか……)」
彼女、いたんだ。
いや、そりゃいるか。
学校の王子様って言われてるくらいだし、彼女の一人や二人いたっておかしくないよ。
「(いや、二人はダメか。二股になるもんね)」
でも、この王子様は、今やフリー。
彼女に振られたばかりの、彼女ナシのイケメンくん。
「(彼女、いないんだ)」
その時。何を思ったか、あられちゃんの言葉が頭をよぎった。
『ま、付き合えたら……なんて夢のまた夢よね。あんなイケメンが彼氏なんて、どれほど徳を積んでも叶いそうにないもん』
わぁ、危ない危ない。
一瞬「こんなイケメンがフリーかぁ」なんて思ったけど、よくよく見れば見るほど、時瀬くんはイケメンで、やっぱり手の届かない存在で。
イケメンと付き合えるなんて少女漫画の中だけ――と思い直した後。あられちゃんの言葉を、これでもかと重く受け止める。
「(よし、リセット完了)」
一周まわってスッキリした心持ちの私。
だけど反対なのが、時瀬くんだった。
「はぁ」
唐突に、おもたーいため息をつく時瀬くん。そんなにアンニュイって言葉が嫌いなのかな?
でも、でもさ。
この先も時瀬くんはアンニュイって言葉に翻弄されるだろうけど、この顔面にかかれば苦労することなく彼女を作れるよ。そして幸せになれるに決まってる。少女漫画のヒーローとヒロインみたいに。
……でも。
なんか、それってさ。
「羨ましいな」
「へ?」