アンニュイな偽カレに、愛され注意報⚠︎ (短)
俺に恋を教えて
だからと言って、恋に百戦錬磨(だろう)時瀬くんの胸に、私の言葉が本当に刺さってるか分からない。
失礼だけど、そんなに繊細に見えないというか――すると、そんな私のふてぶてしい態度を見抜いたのか。時瀬くんは私へと、足を前に進めた。
「どうしても謝らないっていうならさ」
時瀬くんの真っ直ぐな目が、私を射抜く。
「俺に恋を教えてくれない?」
「へ……恋?なんで?」
「謝らない罰として」
「罰!?」
私の「羨ましい」発言は、そんな大事(おおごと)になっていたのかと。自分のことながら今更おどろく。
いや、でもさ。
だからって、なんで恋?
「他を当たってくれないかな。私は、その……忙しいので」
「一年の時からずーっと帰宅部な沢井さんが〝忙しい〟ねぇ。ずいぶん俺って嫌われてるんだね。更に傷ついたなぁ」
「な、なんで帰宅部って知ってるの!?」
私が帰宅部なんて、どうでもいい情報。
時瀬くんには、ぜったい必要ないモノだよね?
だけど時瀬くんは、今までポケットに突っ込んでいた手を抜き、あろう事か私に差し出した。
そのまま私の頬に触れた彼の手は、ホカホカのヌクヌクで。安心する温度に、思わず緊張の糸がゆるむ。