アンニュイな偽カレに、愛され注意報⚠︎ (短)
規制線が全く無くなった私の心。
それを狙ったように、時瀬くんは破壊力ある言葉を投下した。「なんで帰宅部って知ってるの?」その答えとは――
「俺たち同じクラスだよね?
なら知ってるの、当たり前じゃん」
「!」
当たり前……なんだ。
その言葉は意外というか、なんというか。
今、私の目の前でニコリと笑う時瀬くんから、そんなことを言われるなんて思わなかった。
日頃は女子に囲まれてる時瀬くんが、蚊帳の外にいる私のことを知っていてくれたなんて……なんか嬉しい。
「皆のこと、よく見てるんだね」
なんて返せばいいか分からなくて。
頬に置かれた手を、どう処理していいかわからなくて。
逃げるように時瀬くんから一歩引いた後。二人の間に微妙な空間を空けたまま、他愛ない話を始めた。
「時瀬くんにとって、恋は難しいの?」
「難しい、かな。俺が思ってる俺と、女子が思ってる俺って、なんか違うんだもん」
「さっきのアンニュイってのが原因で?」
「……まぁね」
私が離れた今、空気しか触れてない手を下ろしながら、時瀬くんは眉を下げて笑う。