余命2年の王子様
ストレスがたまる会議を終え、昼休みに莉央といつもの場所でご飯を食べた。

『もうーーー!あのクソ部長!何が『何を言ってるんだ、君は』だよ!人をさしておいてあれはないっつーの』
麻里亜の怒りのボルテージはマックスに達していた。
『麻里亜、落ち着きなよ。気持ち、すんごーーーくわかる!私なんて『君は、バカかね?』だよ。
だから、会議って嫌い!』
莉央も莉央でストレスマックスだ。

二人で部長と会議の愚痴を言ってると、林玲子がいた。

『ねぇ、林さんだ。最近、彼氏できたって聞いたけど、どんな人?』
『あぁ、私の彼氏の兄。弁護士さん』
『うっそー!』
『声がデカイっつーの!』

莉央が驚いて、声が響いた。麻里亜は、とっさに注意した。

『いや、びっくりするって!林さんって確かに清楚でかわいいけど、仕事に一筋って感じの子に見えたから、つい』
テヘッと舌を出して笑う莉央に麻里亜は、思わずイラッとした。
すると、こちらに気づいた林玲子が笑って、こっちに近づいた。

『先輩方、お疲れ様です。』
『お疲れ。林さん、智さんとどう?』
『どうって?あぁ、連絡は、取りあってますけど、忙しいからなかなかデートは、できませんが。
でもたまにディナーに連れてってくれます。』
よかった。ちゃんとうまくやってる。安心した麻里亜の横で莉央が聞いた。

『あのさ、林さん。智さんと林さん、どっちからこくったわけ?』
『私からです。友達からでもいいのでお付き合いしたいですって言ったら、いいよって感じです。』
『林さん、大胆だね~。こっちの麻里亜ももっと大胆だったよ。』
コラコラ!なに言ってんだ!と麻里亜は、恥ずかしすぎて思い出したくない、病室での大胆告白を
後輩の前で話すなんてできるわけない!
するとキラキラした目で麻里亜に『なんて告白したんですか?』と訴える。
この瞳に弱いんだよ~。私は。と麻里亜は、ため息して、話し始めた。

『あのね、彰は、胃がんで余命2年なの。それが理由で恋人作りたがらなかったわけ。
でも、私が覚悟して付き合うって言ったら、OKしてくれた。』
『すごい!先輩、カッコいいです。』
玲子は、感動して涙を流してる。あぁ、この子は、純粋でいい子だな。と麻里亜は、感動した。

『そんな、カッコよくもないんだけど。』
『照れてる~~!』
『うっさい!』
私は、莉央を肘で小突いた。

ーーーーーーーーーー
オフィスに戻って、スマホを見ると彰から返信が来た。
わくわくして、開くと

【遅くなってごめん。体調が悪くて、なかなかできなかった。入院の手続きして、検査もして
やっと落ち着いた。昨日は、ありがとう。僕も楽しかったよ。お仕事、頑張ってね!】

体調悪いという文字を見て、麻里亜は『自分と食べた海老天うどんのせいじゃないか?』と思った。
検査して病が進んでなければいいな。と願った。
私は、【ありがとう。また近いうちに会いに行くからね。】と打って、送信した。

今日は、2時間も残業させられた。こんなに頑張ってお給料は、手取り13万だ。
はぁ~っとため息つきながら、麻里亜は、スーパーに寄って、サラダとお惣菜買う。
途中で見覚えのある人物を見た。彰の叔母の志保さんだ。
話しかけようと思ったが、志保さんは、どうやらお友達らしき人と楽しそうに話してて、こっちに気づいてない。
話しかけるのは、今日は、やめた。サラダとお惣菜のコロッケを買って、帰路についた。

帰宅後、麻里亜は、お皿にサラダとコロッケを盛りつけた。
お味噌汁がまだ残ってたのでお味噌汁を温め、炊飯器で炊いたご飯が冷凍してあったので、レンジで温める。
リビングのテレビをつけ、テレビを見ながらご飯を食べる。
今日は、月曜日。麻里亜は、好きなバラエティー番組を見ながらご飯を食べる。
デカ盛りメニューを制限以内に食べれるかという番組で、一人暮らしの寂しさを紛らわせるために毎週見てる。

『(この女優さん、綺麗なのにたくさん食べても太らないって羨ましいなぁ)』

いつも人気作のドラマに引っ張りだこの40代女優は、たくさん食べても太らないため、麻里亜は
羨ましいと思って、ご飯を食べる。

やがて人気芸人やタレントたちがギブアップしてく中で、40代女優は、制限時間ギリギリになってギブアップしてしまった。
『(あと少しだったのになぁ。すごいなぁ)』
結局、完食したのは、元祖大食いタレントだ。
ネット上では【やらせだ】とか言われるが、麻里亜は、やらせではないと信じてる。
好きな番組は、みんな人それぞれだと思ってるからだ。

ごはん食べ終わった後、食器を片付け、お風呂は、わかすのが面倒くさかったので、シャワーだけにして
歯磨きをして、夜22時には、寝たのだった。

ーーーーーーーーーー

~柚木彰Side~

麻里亜と初デートの日、僕は、緊張して、眠れなかった。
同じ病室で寝てた時は、それほど緊張しなかったが、女性とデートは、これが初めて。
麻里亜が好きだといううどん屋さんが楽しみで、叔母さんが作ってくれたあっさりしたご飯も
喉が通らなかったほどだ。

僕は、麻里亜に【あわてなくていいよ】って趣旨のメッセージを送った。
車の中でおばさんから『彼女とのデート、楽しみね!』と言われたが、僕は、緊張して
『うん』としか答えられなかった。

麻里亜が言ってた満腹製麺ってお店に着いた。
見渡すと、麻里亜が走ってきた。あわてなくていいのに。僕は、ずっと待てるのに。
と思ってたら、麻里亜の服装がすごく素敵だった。
いつも大体、会うときはスーツか動きやすいジーンズが多いが、今日は、スカート姿だった。
淡い水色のギンガムチェックのワンピース、ゆるく巻いたショートボブ、ネイルもシンプルで
どれもかわいい。

心臓がバクバクしてて、麻里亜に鼓動が聞こえるんじゃないかってくらいうるさかった。

お見せの中に入ると、お客は、そんなに多くなかった。
麻里亜が僕に気遣って、人が少ない時間にしてくれた。ゆっくり食べられるように。
優しいな。麻里亜は。

僕と麻里亜は、海老天一尾と素うどんを注文して、席に座った。
海老天は、そんなにしつこくなくて、僕でも食べやすかった。
うどんも面がもちもちしてて、お出汁もすごく優しい。
人生で一番うどんかもしれない。麻里亜が好きだという理由、わかる。

帰り、麻里亜を抱きしめたとき、ほのかに香ったせっけんの香りがすごく好きだった。

また絶対、会えるよ。

と言って、僕は、おばさんの車に乗って、おばさんの自宅へ帰った。

帰宅後、麻里亜からメッセージが来たけど、すごく疲れたから、夕飯食べて、お風呂入って、歯を磨いて
すぐ寝た。
朝は、体調が優れなくて、入院の準備は、おばさんがしてくれた。
なんとか起き上がって、おばさんに連れられて、病院へ行った。

いつもの部屋に帰り、検査もしたが、数値も結果も変わらなかった。
気づいたら、お昼になってた。
さっそく携帯使用許可の場所まで行き、麻里亜に返信をした。
最後に『お仕事、頑張ってね。』とつけた。

そして、夕飯を食べて、歯を磨いて寝た。

~柚木彰Side終了~

ーーーーーーーーーー

翌朝、麻里亜は、彰にメッセージを送った。
【今日、会っても大丈夫?私の友人が会いたいって言うんだけど】

麻里亜は、ななみ、由香里、真奈美に彰を紹介するのだ。
麻里亜は、彰の親に挨拶するかのような気持ちで緊張した。



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