余命2年の王子様
ななみたちが正式に離婚して、仕事が見つかるまでの間、麻里亜の家にお世話になる初夜。
たまきとほまれは、家から持って出たという幼児向けのDVDを見たり、「ママといっしょだよ」という
番組を見て、音楽に合わせて踊ったり、クイズに挑戦したりしてた。
麻里亜は、見ててかわいいと思った。

妹のたまきちゃんは、好奇心旺盛で元気いっぱいでダンスが大好きだという。
姉のほまれちゃんは、天真爛漫でニコニコしてて、歌うことが大好きだという。

双子でも特徴があってかわいい。

麻里亜は、虐待されてないみたいでよかったと安心した。

『家を出るとき、二人とも『ママをいじめるパパが大嫌い。』って言ってくれて、母親失格だと思ってた
私の心救ってくれたのよ。』
『きっと、ななみが心から大事に育てた証拠だよ。』
『うふふ。そうかな?ごめんね。しばらくうるさいと思うけど、麻里亜が仕事の間は、私が家事とか
買い物したり、夕飯作っててあげるよ』
『そこまでしてもらうと申し訳ないよ。家事、折半しましょ。もうななみは、頑張らなくていいんだよ。』

ななみは『そうだね。もうここは、あの家じゃないものね。つい癖で』と嬉しくて泣いた。

たまきちゃんとほまれちゃんが台所に来て『お腹すいた~』とハモってきた。
麻里亜は『ごめんね。もうすぐできるよ。』というと二人とも『お手伝いするー!』と言ってくれた。
きっとテレビ見るだけじゃ飽きてきたのだろう。
ななみから『じゃあ、お箸とお茶碗並べてね』というと二人とも元気に返事をして、お箸とお茶碗並べていた。

『いつも二人でおままごとしてるから、並べるの上手なの。』
『さすが、女の子だね。』

ーーーーーーー

出来上がったハンバーグと千切りキャベツ、豆腐とお揚げのお味噌汁、ごはん、双子には、デザートのリンゴをつけた。
みんなで『いただきます!』と元気に行って、食べると双子が『おいしい~!』とまたハモった。

『ママ、お姉ちゃん。ごはんすごくおいしいよ!』
『パパと二人だといつもカップラーメンだったもんね。』

二人は、ニコニコして話す。麻里亜は、父は、双子を育児放棄もしてたかと思うと腹が立った。

『あの人、いつもそうなの。たまきとほまれのお世話、ろくにしないの。だから、心配で出かけるの難しかった。』
『そうだったんだ。たまきちゃんとほまれちゃん、早く幼稚園見つかるといいね。』
『ありがとう。』

たまきとほまれ見ると、千切りキャベツをおいしそうに食べる。
この子たち、野菜の好き嫌いないのだろうか?
ななみに聞いてみれば『ないのよ。ピーマンもにんじんもたまねぎもちゃんと食べてくれるから、助かる。』
とのこと。偉いなぁ。と感心した。

『麻里亜お姉ちゃん!ママ、ご飯作ってくれてありがとう!ごちそうさまでした。』

麻里亜とななみは、作り甲斐あったなと笑いあった。
二人で食器を片付け、ななみと双子には、先にお風呂に入ってもらった。
歯磨きをして、双子は、夜9時には、寝てしまった。今夜からななみと双子姉妹は、客間という
お客様が来た時の寝室が一部屋あったのでそこで寝てもらうことにした。

『ごめんね。お風呂。』

お風呂からあがると、ななみが謝ってきた。

『大丈夫。私も楽しいよ。怖い?』
『ううん。あれから旦那から連絡ない。たぶん、好き勝手やってると思う。麻里亜がお風呂に入ってる間、
智さんから電話来て、なかなか旦那さん、話を聞いてくれない。今日なんか玄関の鍵閉めて、居留守使われたって。
電話もしたけど、全部無視だって。私という奴隷とたまきとほまれという八つ当たりのサンドバッグいなくなったら
困るのよ。きっと』

麻里亜は、ななみの旦那が許せなかった。こんなに優しい親友とかわいい子供をいじめたことが。
たまきちゃんとほまれちゃんは、とても素直で人懐っこくてかわいいじゃないか。
親のお手伝いもするし、ごはんもおいしそうに食べてくれる。
1日過ごしただけで、あの子たちは、とてもいい子だ。

『智さんなら絶対負けないよ。』
『ありがとう。』

その時だった。客間で寝てたはずの双子が急に泣きだした。
『どうしたんだろう?』
『たまき!ほまれ!』
麻里亜とななみは、急いでほまれとたまきの元へ行った。
知らない人の家に泊まって、家が恋しくなったのかと思われたが、二人の口から驚くべき言葉が出た。

『あのね。パパに毎日叩かれたの。ママが長時間出かけたらね、パパにほっぺた叩かれたの。
でもしゃべるな。って。しゃべったら体バラバラにするって。わぁぁぁぁん』

たまきちゃんが泣きながら母親の腕の中で話した。
ほまれちゃんは麻里亜が抱きしめた。

『パパがお姉ちゃんの家に来たの怖かった。』

二人ともとても怖い思いしてたんだね。ママに話したくても話せない。
一番の味方になってくれるママ。ななみに話せなかったのだ。

『大丈夫よ。ここに怖いパパはいないよ。優しい麻里亜お姉ちゃんしかいないよ。
二人とも頑張ったね。ママと麻里亜お姉ちゃんが守ってあげるからね。
安心して寝てね!』

『私、ホットミルク作ってきてあげるよ。』
『助かる』

麻里亜は、台所で牛乳温めた。双子お気に入りのプリンセスのマグカップに入れて
持って行った。

『はい。たまきちゃん、まりあちゃん』
『ありがとう。さぁ、二人とも、ゆっくり飲もうね。』

二人は、フーフーしながら飲んだ。さっきまで泣いてたのが嘘かのように
ニコニコして『ありがとう』って言ってくれた。
飲み終わったら、安心して寝た。

ななみは『許せない。私がいない間にそんなことしてたなんて。絶対、慰謝料たっぷりとって、
養育費も倍にして払ってもらわなきゃ割に合わない!』
麻里亜は、強くなったなぁ。と感じて、それぞれ床についたのだった。

ーーーーーーーーー

翌日、みそ汁のいい匂いに目が覚めた麻里亜は、台所に行くと
ななみが朝食作ってくれてた。

『おはよう。麻里亜。ごはんできたよ』
『ありがとう。ごめんね。』
『いいの。目が覚めたから。勝手に台所使ってごめんね』
『ううん。たまきちゃんとほまれちゃんは?』
『まだ寝てるから、そっとしておいてあげて。』

相当、昨日、はしゃいで疲れたらしい。

『お弁当も作ってあげたの。お仕事、頑張ってね!』
『ありがとう!ご飯、おいしかったよ。』

私は、ななみの手作り弁当持って、会社へ行った。

ーーーーーーーーー

『おはよう』
『おはよう』

莉央は、もうすぐ退職するからか。荷物がどんどん減っていた。

『麻里亜と仕事できるのあと1週間か~。彼氏、どうなの?』
『彰、まだ集中治療室にいるみたい。早く回復したらいいんだけど。』
あの日、スーパーで志保さんに会った時、彰が集中治療室から出たと病院からお知らせ来たら
私にも教えてあげると連絡先を交換したのだった。

『心配だね。麻里亜、笑っていなよ。麻里亜の笑顔のパワーがきっと、絶対に
彼氏さんに届くよ。絶対だよ!」

莉央にそう言われて、私は、口角をあげた。

『そうだね。そうだよね!私が笑ってないと、彰、悲しむもんね。』

私は、これから笑顔でいよう。笑顔でい続けたら彰は、絶対また
普通病棟に戻ってきてくれる。

そう、信じた。




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