余命2年の王子様
#2『離れていても』
退院する朝が来た。
この3週間、麻里亜にとって、ジェットコースターのような時間だった。
彰と恋人同士になれたことで麻里亜は、照れくさい。まさか、自分から大胆に告白するとは、思わなかった。
母が迎えに来るのは、9時30分ごろ。
あと1時間もある。
『あのさ、連絡先、交換してもいい?麻里亜とたまに電話したいなって』
彰がボソッとダメ元で頼んだ。
『いいよ。私も彰の声聞きたいよ。』
『たまに電話でしっかり食べてねって言ってほしいな。麻里亜の声だと食べれる自分がいる。』
彰は、照れていた。その顔、可愛いと言いたいが本人は、男としてのプライドあったらいけないから、心の中で留めておこう。
『麻里亜~。退院おめでとう。柚木さんお世話になりました。』
母が来て、彰に挨拶する。
『いえ、こちらこそ。話すの楽しかったです。』
『彰、また、会いにくるからね。』
『麻里亜、待ってるよ。』
母が『あら~』と何やらニヤニヤしてるが、気にしない。
看護師さんたちにも挨拶した。中でも宮野さんが母に『彰くんと麻里亜ちゃん、カップルになったの』なんて余計な事言ったせいで、母は、ますます『いつの間に』とニヤついた。
会計済ませて、母の車の中で、母は
『ねぇ、柚木さんといつ付き合いだしたの?』
なんて聞いてきて、私は、告白した日、大勢のギャラリーの前で告白したのを思い出し、急に恥ずかしくなった。
『つい、最近・・・・かな。』
『まぁ、麻里亜から?柚木さんから?』
『私・・・・から。』
もうこれ以上聞かないで。恥ずかしい。
と思いつつ、答える。母は、嬉しそうに笑う。
時刻は、今、10時20分くらいだ。彰は、主治医の先生から何を聞かされてるんだろう。
心配で、不安でたまらない。闘病生活長いから彰は、慣れてるだろうけど、私は、彰が可哀想でならないんだ。
あんなに優しくて、真面目な人がなぜ病に苦しまなければならないんだ。
麻里亜の中で密かに『胃がん』を憎んだ。
『ねぇ、ちょっと早いけど、お昼ご飯どっかで食べに行かない?』
母の声にビクッとなり、相当考えていたことに気づいた。
『うん。いいね。うどんがいいな。』
『じゃあ、満腹製麺に行きましょ。今なら空いてるし、ゆっくり食べられるわよ。』
満腹製麺、麻里亜が大好きなうどん屋さんだ。
うどんは、モチモチ、お出汁は、優しい味わいで、天ぷらなんてみんな揚げたてだ。
麻里亜は、久しぶりにえび天をのせたうどんが食べたくなったのだ。
駐車場に着くと車は、5台しかなく、中に人もそれほどいない。
まだ昼前だからだろう。
『じゃあ、私は、素うどんで茄子とサツマイモの天ぷらトッピングで。麻里亜は?』
『私は、素うどんでえび天をトッピングで。』
それぞれ注文したうどん受け取って、席に座る。
うん。相変わらず満腹製麺は、美味しい。
食事時は、いつも多いからなかなか入れないんだよなぁ。
と麻里亜は、心の中で舌鼓を打つ。
『麻里亜、あの時、なんで電話して来たの?』
あの時・・・あぁ、彰は、もしかして胃がんじゃないかとまだ疑問抱いてた時だ。
『気になったから。彰が何の病か。でも本人は、聞いてほしくないかもしれなかったから、それで・・・』
そのイライラを母にぶつけてしまった。
情けない娘でごめんね。お母さん。
すると母は、意外にも明るい声でこう言った。
『良かった。私は、麻里亜、胃がんになったンじゃないかって、心配してたんだよ。でも、柚木さんってまさか?』
『うん。胃がん。しかも余命2年だって』
余命2年の人と恋人同士だなんて反対されるにきまってる。
母に反対されたってかまわない。
私が好きになった人なんだから!
『2年で柚木さんを幸せにしてあげなさい』
『え?』
意外だった。反対するかとおもった。
『2年の間、麻里亜と出会えて良かった、幸せだったって思える思い出をあなたがプレゼントするのよ。お金かけた物より思い出の方が人は、嬉しいのよ。』
母の言葉に嬉しくなった。
『そうだね。ありがとう。反対されるかと思った。』
『反対なんてしないわよ。大事な娘が好きになった人だもの。母さん、応援してるから。』
私は、思わず涙が出たのだった。
今日、食べたうどんは、今まで1番最高に美味しかったのだった。
ーーーーーーーーーー
自宅へ帰宅すると彰から一通のメールが入ってた。
嬉しくて、思わず開くと、想像しなかった文字が入ってきた。
〖麻里亜へ。主治医からがんが他に移転してる可能性があるって言われた。移転してるがんは、まだ小さいから治る可能性もあるって。不安にさせてごめんね。〗
思わず泣いた。ベッドに埋もれて泣いた。
神様、何で彰にばっか苦しませるんだ。
彰は、ずっとずっと苦労したんだよ。ちょっとくらい幸せになったっていいじゃないか!
彰は、優しい。ズルいくらい優しい。
彰は、治療も検査も頑張ってるのに。そんなに彰を早く天国に行かせたいの?
私は、そうは、させないと思い、スマホ握りしめ、彰に返信した。
〖治る可能性あるなら、絶対絶対に大丈夫だよ。来週の月曜日、仕事終わったら会いに行くね。〗
それだけ打って送信した。
返信は、なかった。きっと疲れたのだろう。
私も来週からの仕事に向けて寝ることにした。
ーーーーーーーーーー
~彰side~
がんの移転が判明してしまった。麻里亜に話すか迷った。また泣かせてしまう気がしたからだ。
手術すれば移転したがんは、治ると言われた。
でも胃がんだけは、治らないらしい。
死ぬ運命だけは、変わらないらしい。
健康診断サボったツケが回ってきたんだ。
仕方ないかな。
そんなこと言ったら、麻里亜に怒られるな。
僕は、スマホ握りしめ、携帯使用許可まで来て、メール打っていた。
送信して、30分後くらい返信きた。
来週、会いに来てくれるんだ。返信したいけど、いろいろ疲れて、明日にしよう。
待ってるよってね。
~彰side終了~
ーーーーーーーーーー
日曜日。
退院祝いと称した女子会が開かれていた。
親友のななみも双子姉妹を旦那に任せて、来てくれた。
『麻里亜、退院おめでとう!』
友達3人に言われ、嬉しい麻里亜もお礼言った。
『ねぇ!柚木さんとどうなったの?』
ななみがさっそく彰について聞いた。聞かれると思った麻里亜は、素直に『付き合ってる』と言った。
すると、女子特有の『きゃー!』という高い声が響いた。ここは、カフェだということ忘れないでほしい。
と思った麻里亜だった。
『柚木さんってどんな人?』
ショートカットが似合うモデル美女の相川由香里は、興味津々で聞いてきた。
『身長高いよ。178くらいかな?』
と答えると、隣のセミロングの愛くるしい顔立ちの伊藤真奈美が『羨ましい!』と言った。
『写真ないの?』
由香里が言う。写真なんて恥ずかしくてない。
『あ~私、チラッと顔見たんだよね。見舞い帰りに入れ替わりで』
ななみ、余計な事言わないで!
と願ったが、願いは、虚しく散る。
『どんな感じ?イケメン?』
真奈美がキラキラした日で聞く。
『顔は、爽やかなイケメンだったよ。高身長で。草食系男子って感じだよ。なんか痩せてたんだよね。何の病か知らないけど。麻里亜ってどこが好きなんだってちょっと不思議だった。』
言い方が彰をバカにしてるかのように聞こえた。
麻里亜は、イライラを我慢した。今だけだ。
『麻里亜、知ってるでしょ?柚木さん、何の病なの?』
ななみは、聞いてくるが、他2人も『私、草食系男子、無理だわ』とか言って、腹が立ってきた。
もう我慢の限界だ。
『うるさい!あんたらに彰の魅力わかってほしくない!私だけわかってればいいんだよ!彰は、誰より苦労して、苦しい思いしてんだよ!』
突然の大声に店員も他の客も何事かと見てる。
構わず続けた。
『彰は、食べたいものも飲みたいものもずっと我慢して、痛い治療や苦しい治療に耐えてるの。それを見せない、愚痴や不満言わない。そんな彼をバカにする資格なんてあんたらにないんだよ!』
気づいたら泣いていた。
ななみも由香里も真奈美も呆然としてた。
『ごめんね。言いすぎた。もう帰る。お代ここにおいておくから。』
私は、荷物を持って、店員と他の客に頭を下げて帰った。もうこのカフェには、2度と行けないな。
オシャレでケーキもかわいくて、お気に入りだったけど。
私は、帰って、再び静かに泣いた。
この3週間、麻里亜にとって、ジェットコースターのような時間だった。
彰と恋人同士になれたことで麻里亜は、照れくさい。まさか、自分から大胆に告白するとは、思わなかった。
母が迎えに来るのは、9時30分ごろ。
あと1時間もある。
『あのさ、連絡先、交換してもいい?麻里亜とたまに電話したいなって』
彰がボソッとダメ元で頼んだ。
『いいよ。私も彰の声聞きたいよ。』
『たまに電話でしっかり食べてねって言ってほしいな。麻里亜の声だと食べれる自分がいる。』
彰は、照れていた。その顔、可愛いと言いたいが本人は、男としてのプライドあったらいけないから、心の中で留めておこう。
『麻里亜~。退院おめでとう。柚木さんお世話になりました。』
母が来て、彰に挨拶する。
『いえ、こちらこそ。話すの楽しかったです。』
『彰、また、会いにくるからね。』
『麻里亜、待ってるよ。』
母が『あら~』と何やらニヤニヤしてるが、気にしない。
看護師さんたちにも挨拶した。中でも宮野さんが母に『彰くんと麻里亜ちゃん、カップルになったの』なんて余計な事言ったせいで、母は、ますます『いつの間に』とニヤついた。
会計済ませて、母の車の中で、母は
『ねぇ、柚木さんといつ付き合いだしたの?』
なんて聞いてきて、私は、告白した日、大勢のギャラリーの前で告白したのを思い出し、急に恥ずかしくなった。
『つい、最近・・・・かな。』
『まぁ、麻里亜から?柚木さんから?』
『私・・・・から。』
もうこれ以上聞かないで。恥ずかしい。
と思いつつ、答える。母は、嬉しそうに笑う。
時刻は、今、10時20分くらいだ。彰は、主治医の先生から何を聞かされてるんだろう。
心配で、不安でたまらない。闘病生活長いから彰は、慣れてるだろうけど、私は、彰が可哀想でならないんだ。
あんなに優しくて、真面目な人がなぜ病に苦しまなければならないんだ。
麻里亜の中で密かに『胃がん』を憎んだ。
『ねぇ、ちょっと早いけど、お昼ご飯どっかで食べに行かない?』
母の声にビクッとなり、相当考えていたことに気づいた。
『うん。いいね。うどんがいいな。』
『じゃあ、満腹製麺に行きましょ。今なら空いてるし、ゆっくり食べられるわよ。』
満腹製麺、麻里亜が大好きなうどん屋さんだ。
うどんは、モチモチ、お出汁は、優しい味わいで、天ぷらなんてみんな揚げたてだ。
麻里亜は、久しぶりにえび天をのせたうどんが食べたくなったのだ。
駐車場に着くと車は、5台しかなく、中に人もそれほどいない。
まだ昼前だからだろう。
『じゃあ、私は、素うどんで茄子とサツマイモの天ぷらトッピングで。麻里亜は?』
『私は、素うどんでえび天をトッピングで。』
それぞれ注文したうどん受け取って、席に座る。
うん。相変わらず満腹製麺は、美味しい。
食事時は、いつも多いからなかなか入れないんだよなぁ。
と麻里亜は、心の中で舌鼓を打つ。
『麻里亜、あの時、なんで電話して来たの?』
あの時・・・あぁ、彰は、もしかして胃がんじゃないかとまだ疑問抱いてた時だ。
『気になったから。彰が何の病か。でも本人は、聞いてほしくないかもしれなかったから、それで・・・』
そのイライラを母にぶつけてしまった。
情けない娘でごめんね。お母さん。
すると母は、意外にも明るい声でこう言った。
『良かった。私は、麻里亜、胃がんになったンじゃないかって、心配してたんだよ。でも、柚木さんってまさか?』
『うん。胃がん。しかも余命2年だって』
余命2年の人と恋人同士だなんて反対されるにきまってる。
母に反対されたってかまわない。
私が好きになった人なんだから!
『2年で柚木さんを幸せにしてあげなさい』
『え?』
意外だった。反対するかとおもった。
『2年の間、麻里亜と出会えて良かった、幸せだったって思える思い出をあなたがプレゼントするのよ。お金かけた物より思い出の方が人は、嬉しいのよ。』
母の言葉に嬉しくなった。
『そうだね。ありがとう。反対されるかと思った。』
『反対なんてしないわよ。大事な娘が好きになった人だもの。母さん、応援してるから。』
私は、思わず涙が出たのだった。
今日、食べたうどんは、今まで1番最高に美味しかったのだった。
ーーーーーーーーーー
自宅へ帰宅すると彰から一通のメールが入ってた。
嬉しくて、思わず開くと、想像しなかった文字が入ってきた。
〖麻里亜へ。主治医からがんが他に移転してる可能性があるって言われた。移転してるがんは、まだ小さいから治る可能性もあるって。不安にさせてごめんね。〗
思わず泣いた。ベッドに埋もれて泣いた。
神様、何で彰にばっか苦しませるんだ。
彰は、ずっとずっと苦労したんだよ。ちょっとくらい幸せになったっていいじゃないか!
彰は、優しい。ズルいくらい優しい。
彰は、治療も検査も頑張ってるのに。そんなに彰を早く天国に行かせたいの?
私は、そうは、させないと思い、スマホ握りしめ、彰に返信した。
〖治る可能性あるなら、絶対絶対に大丈夫だよ。来週の月曜日、仕事終わったら会いに行くね。〗
それだけ打って送信した。
返信は、なかった。きっと疲れたのだろう。
私も来週からの仕事に向けて寝ることにした。
ーーーーーーーーーー
~彰side~
がんの移転が判明してしまった。麻里亜に話すか迷った。また泣かせてしまう気がしたからだ。
手術すれば移転したがんは、治ると言われた。
でも胃がんだけは、治らないらしい。
死ぬ運命だけは、変わらないらしい。
健康診断サボったツケが回ってきたんだ。
仕方ないかな。
そんなこと言ったら、麻里亜に怒られるな。
僕は、スマホ握りしめ、携帯使用許可まで来て、メール打っていた。
送信して、30分後くらい返信きた。
来週、会いに来てくれるんだ。返信したいけど、いろいろ疲れて、明日にしよう。
待ってるよってね。
~彰side終了~
ーーーーーーーーーー
日曜日。
退院祝いと称した女子会が開かれていた。
親友のななみも双子姉妹を旦那に任せて、来てくれた。
『麻里亜、退院おめでとう!』
友達3人に言われ、嬉しい麻里亜もお礼言った。
『ねぇ!柚木さんとどうなったの?』
ななみがさっそく彰について聞いた。聞かれると思った麻里亜は、素直に『付き合ってる』と言った。
すると、女子特有の『きゃー!』という高い声が響いた。ここは、カフェだということ忘れないでほしい。
と思った麻里亜だった。
『柚木さんってどんな人?』
ショートカットが似合うモデル美女の相川由香里は、興味津々で聞いてきた。
『身長高いよ。178くらいかな?』
と答えると、隣のセミロングの愛くるしい顔立ちの伊藤真奈美が『羨ましい!』と言った。
『写真ないの?』
由香里が言う。写真なんて恥ずかしくてない。
『あ~私、チラッと顔見たんだよね。見舞い帰りに入れ替わりで』
ななみ、余計な事言わないで!
と願ったが、願いは、虚しく散る。
『どんな感じ?イケメン?』
真奈美がキラキラした日で聞く。
『顔は、爽やかなイケメンだったよ。高身長で。草食系男子って感じだよ。なんか痩せてたんだよね。何の病か知らないけど。麻里亜ってどこが好きなんだってちょっと不思議だった。』
言い方が彰をバカにしてるかのように聞こえた。
麻里亜は、イライラを我慢した。今だけだ。
『麻里亜、知ってるでしょ?柚木さん、何の病なの?』
ななみは、聞いてくるが、他2人も『私、草食系男子、無理だわ』とか言って、腹が立ってきた。
もう我慢の限界だ。
『うるさい!あんたらに彰の魅力わかってほしくない!私だけわかってればいいんだよ!彰は、誰より苦労して、苦しい思いしてんだよ!』
突然の大声に店員も他の客も何事かと見てる。
構わず続けた。
『彰は、食べたいものも飲みたいものもずっと我慢して、痛い治療や苦しい治療に耐えてるの。それを見せない、愚痴や不満言わない。そんな彼をバカにする資格なんてあんたらにないんだよ!』
気づいたら泣いていた。
ななみも由香里も真奈美も呆然としてた。
『ごめんね。言いすぎた。もう帰る。お代ここにおいておくから。』
私は、荷物を持って、店員と他の客に頭を下げて帰った。もうこのカフェには、2度と行けないな。
オシャレでケーキもかわいくて、お気に入りだったけど。
私は、帰って、再び静かに泣いた。