捨てられた聖女の復讐〜みんな大っ嫌い、だからすべて壊してあげる〜
アシュリーへの想いが募り続ける。
それと同時にどうして自分が彼女を救えないのかと無力さだけが襲う。
アシュリーはオースティンの婚約者だ。
無理矢理攫うことも、ギルバートが守ることもできない。

(もし僕が婚約者だったら絶対にアシュリー嬢を守ってあげられるのに……)

両親にはそろそろ婚約者をと言われていたが、ギルバートはそんな気にはなれなかった。
アシュリーを上回る女性が見つからないという単純な理由からだ。

ペイスリーブ王国で闇魔法を使うギルバートは他を圧倒する力を持っていた。
強大すぎる力は恐れを招く。
だからこそ失敗は絶対にできないし、他者に対して優しく完璧であろうとした。
魔獣を倒し、民を守るために力を振るうことに不満はない。
何もかもを闇で飲み込む恐ろしい力ゆえに無意識に人に触れるのを避けてきた。

普通ならば得体の知れない力に恐れを抱くがアシュリーはなんの躊躇いもなくギルバートに触れた。
それが自分にとって、どれだけ嬉しかったのだろうか。

(彼女は光だ。眩しいくらいに輝いている)

アシュリーはギルバートにとって正反対の存在だった。
だからこそ強く焦がれてしまうのかもしれない。

そんな時、ペイスリーブ王国の書庫から厳重に保管されていた禁書が盗まれたと報告があった。
その犯人を捕まえるためにギルバートは調査を行なっていた。
< 100 / 240 >

この作品をシェア

pagetop