捨てられた聖女の復讐〜みんな大っ嫌い、だからすべて壊してあげる〜
どんなに冷たくしてもアシュリーは必ず魔獣から守る結界を張りに王宮にやってくる。
その内、気遣うことすら面倒になったため、アシュリーがいてもほとんど空気のように扱っていた。
健気なふりをして内心ではこちらを見下しているのだ。
あの被害者面を見ていると苛々した。

(……心の中では自分の力がなくてはいけないと、俺のことを馬鹿にしているに違いないっ!)

アシュリーが王宮に来るたびに、自分の弱さと無力さを突きつけられているような気がした。
アシュリーに救われる度に自分の無力さを感じずにはいられない。

(あれは善人の皮を被った悪魔だ……!)

アシュリーが何をしていても悪に見えて仕方なかった。
あの憐れみの篭った視線にどうしようもなく腹が立つのだ。
ユイナと婚約してすぐに、アシュリーがペイスリーブ王国に行き、王太子のギルバートと結婚したと聞いた時には当てつけのように感じていた。
その相手が自分よりも優れていて完璧だと言われていることも気に入らない。

ギルバートは黒髪と赤い目を持った悪魔のような容姿。
話も合わないし、こちらを見下すような態度も鼻につく。
それで国で一番強い魔法を使うというのだから気に入らない。
顔を合わす度に『もっと婚約者を大切にした方がいい』『後悔することになる』と、ギルバートは婚約者がいないくせにうるさいったらない。
アシュリーをまるで大切な姫のように扱うギルバート。
それにアシュリーと婚約破棄した途端に、結婚したというのも腹立たしい。
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