捨てられた聖女の復讐〜みんな大っ嫌い、だからすべて壊してあげる〜
会場に入った時のオースティンの顔を思い出す。
恐らく無意識なのだろうが、まるで母に縋る子供のようにアシュリーを見ていた。
命が脅かされて恐怖に怯えている。
だから助けてほしい……そんな表情に見えた。

そんなオースティンを目の当たりにして、もう崩壊がはじまったのだと確信を持った。
ユイナの力がなくなっていることに気づいて焦りはじめている。
それからアシュリーの予想通り、オースティンの病が再発したのだろう。

アシュリーが離れてから半年ほど経つだろうか。
オースティンに会っていたギルバートも「時間の問題だろうね」と言っていた。
このままいけば、彼の言葉通りになりそうだ。

サルバリー国王はアシュリーを頼ることができない。
ユイナさえいれば大丈夫だと最終的に判断を下したのはサルバリー国王自身なのだ。
今更、アシュリーに縋ることはできるはずもない。
サルバリー王国の状況など、今のアシュリーにはまったく関係はないことだ。

サルバリー国王と王妃は歯痒いのか、こちらの様子を窺うようにアシュリーを見ていた。
オースティン同様、何かを求めるような視線を向ける。
絡みつく欲の伴った視線は不快だった。
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