捨てられた聖女の復讐〜みんな大っ嫌い、だからすべて壊してあげる〜
(オースティンside)


* * *


オースティンは走り去っていくユイナを追いかけるように指示を出す。
ここで彼女が会場から消えてしまえば、また恥を晒すことになる。

(ユイナはどれだけ俺に恥をかかせる気だ!何でこんなに手が掛かるんだよ……聖女の力さえなければあんな女ッ!)

恐らくユイナはアシュリーに何かを吹き込まれたに違いない。
でなければアシュリーを庇い、パーティーから逃げ出そうとするはずがないのだ。

オースティンは柱を思いきり殴り飛ばした。
じんじんと拳が痛んだが、今はそんなことはどうでもよかった。
自らを落ちつかせるように震える唇を噛む。
呼吸が苦しくなり、体と頭が一気に重くなったような気がした。
そして浮かべたくない笑顔を作ると、騒つく会場へと足を踏み入れた。
会場はダンスで周囲を魅力したギルバートとアシュリーの話題で持ちきりだった。
主役であるはずのユイナは途中で消えて、婚約披露パーティーは成功とは言い難い状況になっている。
サルバリー王家は大勢の前で、再び恥を晒すことになった。

婚約披露パーティーの次の日からユイナは以前にも増して部屋に籠るようになる。
< 181 / 240 >

この作品をシェア

pagetop