捨てられた聖女の復讐〜みんな大っ嫌い、だからすべて壊してあげる〜
理由を必死に聞き出そうとするものの、ユイナは何も言わないそうだ。
アシュリーがユイナに何かを吹き込んだことは確かだ。
あの時から彼女の言動は明らかにおかしくなったのだ。

(……最悪だ!クソッ、クソがっ!)

婚約披露パーティーから数日経ってもユイナと会うどころか部屋からも出てくる気配はなかった。
結界も張ることもないため、嫌がる騎士たちを辺境に派遣して魔獣の対応をさせて、なんとか凌いでいた。
混乱する民たちの声が毎日、王家に届いていく。
この現実を受け入れることしかできない。
治療を心待ちにしている貴族や大臣たちにも、ユイナの事情を説明して中断するしかなかった。

(これからサルバリー王国はどうなってしまうんだ……?)

いつの間にか日が落ちて暗くなりはじめていた。
先ほどから一向に進まない仕事。
オースティンは溜息を吐いて頭を抱えていた。

最近ではアシュリーを追い出す前に、オースティンの病が再発したのではないかと心配していたことを何度も何度も思い出す。

(……なんであの時、否定してしまったんだ!)

すると廊下が妙に騒がしいことに気づく。
部屋に慌てた様子で飛び込んできたのは、幼い頃に王宮でオースティンの治療をしていた医師のカルゴであった。


「──オースティン殿下ッ!」
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