捨てられた聖女の復讐〜みんな大っ嫌い、だからすべて壊してあげる〜
すぐに王宮の周囲を隅々探したが、ユイナは見つからない。
朝、侍女が去ってからすぐに部屋を出て行ったのだとしたら馬車がなくてもかなり遠くまで行けるはずだ。


「もしユイナ様に何かあったら……!それにオースティン殿下の体調にも不安があるというのに」


パーティーの前日にユイナに発作を抑えてもらったがユイナの力が徐々に弱まっているとするなら、いつ効果が切れてもおかしくはない……そう思った瞬間にオースティンの胸元を襲う鋭い痛み。


「……ぐっ!」

「──オースティン殿下ッ!?」


オースティンが膝から崩れ落ちて倒れるのをカルゴがなんとか支えて、ソファーまで引き摺っていく。


「落ち着いてくだされ!オースティン殿下っ、ゆっくり呼吸をするのです!」

「っ、……はぁ、ッぐ」

「誰か……!すぐに来てくれっ」


カルゴが大声で助けを呼ぶ声が遠くに聞こえた。
オースティンは痛む胸元を押さえ込んだ。

(こんなのは……嘘だ。嘘だと言ってくれ!)

視界が徐々に霞んでいき、そのままオースティンは意識を失った。
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