捨てられた聖女の復讐〜みんな大っ嫌い、だからすべて壊してあげる〜
オースティンは心の底から後悔していた。
宰相はアシュリーを予備として取っておけばと言っていた。
そのことが今になって響いてくるとは思いもしなかった。
あの時、アシュリーを〝偽物〟として切り捨てたことで、取り返しのつかないことになってしまった。
動き方次第ではすべてを手に入れていたかもしれない。
だが、選択を間違えたのだ。

エルネット公爵の元にアシュリーがいたのなら金をチラつかせれば治療させることは簡単だったろう。
アシュリーは何も文句を言うことなく言うことを聞いていた。
しかしいくら嘆いたところで過去は戻らない。
 

「一度、アシュリーに謝罪の手紙を出して様子を窺ってみるのはいかがでしょうか?」

「……好きにするがいい」


父にそう提案すると、苛立ちを含んだ低い声でそう言葉が返ってくる。
不安、心配、苛立ち……暗く淀む空気に誰もが口を閉じて下を向いていた。

(どうしたらいいんだ)

胸元の痛みは日に日にひどくなるばかりだ。
オースティンは痛む頭を押さえていた。

数日後、オースティンは高熱と息苦しさで視界がぼやけていた。
ユイナの力は一時的で、すぐに効果は切れてしまう。
そんな時、ノックと共に部屋に入って来たのはユイナとカルゴだった。
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