捨てられた聖女の復讐〜みんな大っ嫌い、だからすべて壊してあげる〜
* * *


一方、ユイナはオースティンの治療を終えて早足で自分の部屋に戻った。
すぐにベッドにうつ伏せになり、シーツを思いきり握り締めた。
オースティンの治療はユイナにとって苦痛でしかない。

(私の命が削れてるってことでしょう!?それを知りながら何度も何度も頼んでくるなんて……信じられない)

周囲から怒りや不満を向けられていることはわかっていた。
それにやはり自分が治療のためだけに必要とされていたのだと改めて思い知らされた。
以前は嬉しかった高待遇も裏が透けた今では気持ち悪くて仕方がない。
自分の周りにいる人がすべて敵に思える。
そう思うと部屋から一歩も出られなくなった。

毎日毎日、甘い言葉を吐いてくるオースティンを受け流す余裕もなく心は疲弊していた。
今では王妃教育もなくなり、部屋でボーッとしながら過ごしている。
それに以前、王宮から逃げ出そうとしたせいで監視が厳しくなっていた。
今、ユイナが一日でも離れたらオースティンはまた病に苦しむからだろう。
一時間おきに何かと理由をつけては侍女が部屋に入ってくる。
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