捨てられた聖女の復讐〜みんな大っ嫌い、だからすべて壊してあげる〜
けれど幸せは長くは続かなかった。
厳しすぎる王妃教育にオースティンの裏切り。
そして特別な力の代償。

すべては自分をうまく利用するための嘘だったのだ。
治療してもらえないのは困るから優しくしていただけ。

次々と明かされていく真実は残酷だった。
まるで今までいい思いをしてきた代償を支払っているようだ。
部屋に閉じ込もりながらオースティンの治療を続ける毎日は地獄のようだった。

(帰りたいよっ、皆に会いたい……!)

元の世界に帰りたくて仕方がない。
今みたいな特別な力がなくても、贅沢ができなくても、家族や友達と笑い合っていたあの日々に戻りたいと強く思う。

ユイナの目からは涙がポロポロと溢れ出た。

月が高く昇り皆が寝静まる時間だけがユイナが唯一自由になれる時間だった。
けれど扉の前には騎士がいて、ユイナが部屋から出て行かないかを見張っている。

(神様、助けて……)

月を見上げていた時だった。
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