捨てられた聖女の復讐〜みんな大っ嫌い、だからすべて壊してあげる〜
また五日ほどかけてサルバリー王国の王宮に帰る。
魔獣の被害は日に日に大きくなっているようだった。
城の裏口から隠れるように王宮の中に入る。
やっとの思いでオースティンはソファに倒れ込んだ。

宰相に急いで確認を取らせると今、エルネット公爵領を管理しているのは誰もおらず大混乱になっていた。
エルネット公爵邸はひどい有様だ。
どうやら二人は最後の金を持ってペイスリーブ王国に渡り、ロイスとアシュリーに助けを求め続けているらしい。
今はペイスリーブ王国の市井で生活しているようだ。

最近は忙しくエルネット公爵のことなどどうでもよくなっていたが、まさか自分たちがユイナのことで手が回らなくなっているうちにこんな事態になっているとは思いもしなかった。


「エルネット公爵の嫡男……確かロイスと言ったか。彼は今どうしている?」

「今はギルバート殿下の側近として働いています。かなり優秀だそうですよ。彼にエルネット公爵を継ぐつもりはありませんよ」


ロイスをこちらに引き込もうとする父の考えにはオースティンも賛同だった。
ロイスがサルバリー王国に戻れば、アシュリーだって彼に会うために国を行き来することになるかもしれない。
だが、その作戦はうまくはいかないようだ。

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