捨てられた聖女の復讐〜みんな大っ嫌い、だからすべて壊してあげる〜
広間に通されると、そこには誰もいない。
十分後、扉をノックする音と共にアシュリーとギルバートが現れる。
そこには複数の護衛の姿があった。
アシュリーはこちらの苦労も知らずに優雅にお辞儀をして挨拶をする。
切羽詰まっているオースティンたちとは違い、その顔は幸せに満ちているようだ。
父と母は挨拶も忘れて焦りながらも口を開く。


「単刀直入に言う!アシュリー、力を貸してくれないか……!」

「お願いよ、アシュリーッ!」

「……」


アシュリーは綺麗に座りながらお茶を並べていく侍女たちを制止する。
ギルバートも笑みを浮かべたまま何も言うことはない。
目を閉じてから静かに口を開く。


「サルバリー国王陛下と王妃殿下が何を仰っているのか……よくわかりませんわ」


そう言うと、アシュリーは天使のようにニコリと微笑んだ。
それには父と母も絶句している。


「挨拶もなしに失礼ではありませんか?」

「……っ」

「顔を合わせて今すぐに治療をしろだなんて……。それにわたくしには関係のない話です。ねぇ、ギルバート殿下?」

「その通りだね。話はそれだけかい?なら、今すぐに帰ってもらってもいいかな」


オースティンが苦しむ様子を見ても顔色ひとつ変えないギルバートとアシュリー。
テーブルを隔ててまるで同じ世界にいるとは思えなかった。
それほど空気が違っていた。
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