捨てられた聖女の復讐〜みんな大っ嫌い、だからすべて壊してあげる〜
「今日は孤児院に行けるのですよね?」

「ああ、そうだね」

「そうだわ。お菓子を持っていくのはどうでしょう?」

「さすがアシュリー、いい案だ」

「皆の喜ぶ顔を見るのが楽しみですわ」


ギルバートとアシュリーは何事もなかったように談笑している。
もう話は終わったと言わんばかりの態度に父は顔を真っ赤にして、母は開いた口が塞がらないといった様子だ。
あまりの温度差に言葉が出なかった。
隣でワナワナと震えはじめた母が首を横に振りながら口を開く。


「オ、オースティンは……今、命の危機を迎えているのよ?」

「まぁ、そうなのですか。それは大変ですわね」

「アシュリーッ!あなたは……あなたは何も思わないの!?」


母の言葉にアシュリーはゆっくりと首を傾げた。
そしてその場に似つかわしくない愉しげな笑みを浮かべて淡々と言葉を吐き出した。


「えぇ、何も思いませんけれど……何か?」

「……っ!?」


平然と答えるアシュリーに大きく目を見開いた。
目の前で笑っているのは幼い頃からよく知っているアシュリーのはずなのに、明らかに何かが違っていた。
禍々しい雰囲気も棘のある言動も以前のアシュリーにはなかったものだ。


「まさかまたわたくしにオースティン殿下を治療しろなどと、くだらない妄言を吐き散らすためにわざわざここまでやってきたわけではないですわよね……?」
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