捨てられた聖女の復讐〜みんな大っ嫌い、だからすべて壊してあげる〜
「ギルバート殿下、落ち着いてくださいませ。わたくしは大丈夫ですから」


その言葉に正気を取り戻したのかギルバートは詰まっていた息を吐き出した。


「今、ギルバート殿下がこの場でこの方たちを殺したら、わたくしが復讐できないでしょう?」

「……アシュリー、君は」

「あら、わたくしったら。うっかり口が滑りましたわ!」

「ははっ……やはりアシュリーには敵わないよ」


二人の間には普段と変わらない和やかな空気が流れていた。
それでもギルバートは気が収まらないのか、手のひらで目元を覆ってから小さく首を振る。


「気分が悪い。アシュリー、行こう」

「ま、待ってくれ……!」

「アシュリーを悪く言うあなたたちとこれ以上は話すことない。今すぐに帰ってくれ」

「誤解なのよ!これは違うの……!」


アシュリーはドレスの裾を持って軽く会釈する。


「……さようなら」


それには国王も王妃も、目を見開いて首を微かに横に振ることしかできない。


「こんな侮辱……許されない、許されないぞッ!」


伸ばされた手を取ると往生際悪く声を上げたサルバリー国王にギルバートは不敵な笑みを浮かべながら答えた。
< 232 / 240 >

この作品をシェア

pagetop