捨てられた聖女の復讐〜みんな大っ嫌い、だからすべて壊してあげる〜
ユイナは捕まえた魔法師によって元の世界へと返された。
そして魔法師は禁術を何度も使った影響で体は砕けてしまった。
魔法は万能ではない。それを証明する形となった。

ユイナに居場所を奪われてしまったが、彼女のおかげで幸せを掴めたのは事実だ。
それに国の事情に巻き込まれて追い詰められていく姿を見て放っておくことはできなかった。

(……苦しませてごめんなさい、ユイナ様)

そして、すべてを壊したことで本当の意味でギルバートの愛を受け入れることができた。
ギルバートは変わらず、アシュリーに寄り添い続けてくれた。
深い深い愛情は少しずつアシュリーを癒していく。 


──数年後


アシュリーは足繁く通ったサルバリー王国の王宮を歩いていた。
いつも結界を張るために使っていた部屋を見つめながら暫くその場から動かずにいた。
もうアシュリーが聖女として結界を張ることはない。

手のひらにキラキラと光る粒をアシュリーは握り潰す。
涙が溢れることはない。
窓に映る自分に手のひらを当てる。
綺麗に弧を描く唇と優しげな笑みがひどく滑稽に思えた。


「願いが叶って、幸せ……?」


問いかけても誰も答えてはくれなかった。
アシュリーは震える手を握りしめた。
ぽたり、ぽたりと温かい何かが流れていく。
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