捨てられた聖女の復讐〜みんな大っ嫌い、だからすべて壊してあげる〜
小さな手から伝わる温かい体温に目を閉じた。
深く息を吸い込んでからアシュリーは瞼を開いて笑みを浮かべる。
目の前にいるギルバートにいつもの笑みはない。
アシュリーは彼を安心させるように頬にキスをした。


「アシュリーは僕をこれ以上、過保護にさせるつもりなの?」

「何を勘違いしているのかしら。懐かしく思って見ていただけよ」

「……。わかった、君を信じるよ」

「ギルバート、わたくしは幸せよ」

「僕も幸せだよ。君なしの人生なんて考えられない」


ギルバートはそう言ってアシュリーの手の甲に口付けた。
いつもと同じ幸せな日々。
アシュリーの視線は自然と窓の外へと向かう。

空には青空が広がって、鳥が空を飛んでいく。
風が吹き、木々はゆらゆらと揺れていた。
透明なガラスにはアシュリーの家族が映っている。


「母上……?」


ジノの声が聞こえて、ふと我に返る。
心配そうにドレスの裾を掴んだジノは、不安そうな表情でこちらを見つめている。
アシュリーは膝をついてから安心させるようにジノに擦り寄った。
ギルバートが両手を広げて二人を包み込むように抱き締める。
アシュリーは二人の背にそっと腕を回して、呟くように言った。


「みんな、大好きよ……ありがとう」







end
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