捨てられた聖女の復讐〜みんな大っ嫌い、だからすべて壊してあげる〜
重たい瞼をゆっくりと開き、アシュリーは首を傾けて辺りを見回した。
(ここは……わたくしの、部屋?)
そして誰かに名前を呼ばれたような気がしてアシュリーは顔を上げた。
「ここは……?」
「アシュリー、体はどうかな。少しは魔力が回復したみたいだね」
「…………どう、して」
「僕の魔力を半分以上持っていってもまだ足りない。君は本当にすごい力を持っているね」
嬉しそうにアシュリーを見つめている青年はここにいるはずのない人物だった。
「ギルバート、殿下……?」
見慣れない真っ黒な髪に血のように透き通る赤い瞳の青年を見てアシュリーは驚いていた。
しかしその顔立ちを見ていると、徐々に白髪で青い瞳のバートとギルバートの姿が重なっていく。
髪色、瞳の色は今は元に戻っている。
『バート』と名乗っていたが、本当はペイスリーブ王国の王太子、ギルバートだったようだ。
「バート様はギルバート殿下だったのですね」
「……うん、騙すような形になってごめんね」
ギルバートは髪色や瞳の色を魔法で変えていたのだと説明した。
「何故こんなことをしたのですか?」
「調べなければならないことがあったんだ。それとどうしてもアシュリーに会いたくてロイスに頼んだんだ」
「わたくしに……?」