捨てられた聖女の復讐〜みんな大っ嫌い、だからすべて壊してあげる〜
アシュリーの目からポロポロと涙が溢れていく。
ギルバートは悲しそうに眉を顰めながら、その涙を指で丁寧に丁寧に拭っていく。


「ごめんね……僕が君を守れたらよかったのに」

「……ギルバート殿下のせいではありませんわ」

「いいや、もっと早く動くべきだった」


ギルバートはどこか遠くを見て答えた。
どうして彼がこんなにもアシュリーを気にかけてくれるのかわからない。
ギルバートは大きなパーティーで挨拶を交わす程度だったはずだ。
オースティンは不機嫌そうだったが、物腰柔らかで優しいギルバートは会場の令嬢たちの視線を奪っていた。
悲しげなギルバートを見ていると、不思議と心が締め付けられるような気がしてアシュリーは思わず胸元を押さえた。

(この気持ちは………何?)

ギルバートに会うたびにアシュリーは胸がざわついていた。
それはオースティンと一緒にいる時には感じることはない気持ちだ。
それにアシュリーは先ほどのギルバートの言葉が気になっていた。
〝僕が君を守れたらよかったのに〟
それはどういう意味なのだろうか。
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