捨てられた聖女の復讐〜みんな大っ嫌い、だからすべて壊してあげる〜
アシュリーはずっと偽りの平和に縋っていた。
自分が我慢していればいい。
両親の言うことに従って良い子でい愛してくれる。
皆が幸せになってくれたら、それでいいと言い聞かせていた。
けれど良い子でいたら、すべてが崩れた。
(なら、わたくしが良い子でいる意味ってなに……?)
ずっと文句を言わずに我慢していたのは何故。
力を使い続けて得たモノは何だ。
今まで何を守ろうとしていたのだろう。
本当はアシュリーだってやりたいことがたくさんあった。
外で遊びたかった。自由に好きなことをしたかった。
令嬢たちとお茶を飲んで普通に過ごしたかった。
(この力は何のために与えられたというの?)
父と母に以前のように愛して欲しかった。
婚約者と幸せな関係を築きたかった。
国王と王妃にも認められたかった。
ずっと見えない鎖で繋がれていた。
けれどそれも先ほどプチンと音を立てて切れたのだ。
「アシュリー……」
「わたくしね、気づいてしまったの……すべてが無駄だったんだって」
呆然と涙を流していると頭を撫でたギルバートは「そうだね、アシュリーの言う通りだ」そう言って、強張る体を抱きしめた。
アシュリーはギルバートのシャツをグッと握る。
窓の外は闇に覆われていく。太陽が沈んで、夜が訪れるのだろう。