捨てられた聖女の復讐〜みんな大っ嫌い、だからすべて壊してあげる〜
「……いいわ、あなたの願いを叶えてあげる。魔法師を捕まえるのにも協力するから」

「今のアシュリーなら、そう言ってくれると思っていたよ」

「そうね、今のわたくしならばそう言うわ」


ギルバートがアシュリーの涙の跡を優しく指でなぞった。
これは互いの利益になる契約だった。
アシュリーはギルバートの手をそっと握った。


「ギルバート殿下はわたくしを守ってくださいね」

「何から守ればいいんだい?」

「わたくしを害すすべてから」

「任せてくれ。これでもペイスリーブ王国では一番強いんだよ」


想いを寄せられているだけ、アシュリーの方が優位だろうか。
ギルバートはアシュリーを裏切らない。
彼の執着はアシュリーの想像を超えてとても強いものなのだ。


「アシュリー、ギルバートとそう呼んではくれないか……?」


赤色の瞳は熱を孕んでいるように見えた。


「ギルバート」


アシュリーはギルバートの名前を笑顔で呼んだ。


「ありがとう、アシュリー」

「折角だから、最期まで一緒に楽しみましょう?」

「ああ……僕は君の剣となり盾となろう」

「あなたがそばにいてくれるのなら心強いわ」


アシュリーの表情は慈愛も優しさもない無機質なものだった。


「ギルバート殿下、すぐにわたくしを迎えに来てね」

「もちろんだよ。すぐに君を迎えに行く」


ギルバートはアシュリーの耳元で囁くように言った。


──さぁ、一緒にこの国を壊してしまおうか
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