捨てられた聖女の復讐〜みんな大っ嫌い、だからすべて壊してあげる〜
クララは雇い主である父よりも、アシュリーの心情を汲んだのだろう。
足を止めて、アシュリーのそばに戻るクララに感謝していた。
そしてアシュリーは胸に手を当ててから小さく息を吐き出した。
「……二人に聞いてほしいことがあるの」
そしてアシュリーはいつものようにニッコリと微笑んだ。
しかし腹の奥から沸々と湧き上がるのは憎悪と怒りだ。
前に立つロイスとクララは驚いたようにアシュリーを見つめていた。
纏う雰囲気は以前とはどこか違い、禍々しく鋭いものになったと肌で感じたからだろう。
「アシュリー、だよな……?」
「はい、ロイスお兄様。わたくしはアシュリーですわ」
「……アシュリーお嬢様?」
シンと静まり返る部屋の中で凛とした声が響く。
「わたくしね……今日から悪い子になるの」
そう言った後に、アシュリーの桃色の唇がゆっくりと弧を描いく。
ライトブルーの瞳はガラス玉のように無機質で何も映し出してはいない。
動揺を隠しきれないロイスとクララは困惑して顔を見合わせた。
「お前の身に起こったことは……すごく辛いだろうが、アシュリー、悪い子だなんて。一体どうするつもりなんだ?」
「そのままの意味ですわ」
「アシュリーの言う悪い子になって、アシュリーは幸せになれるのか!?」