捨てられた聖女の復讐〜みんな大っ嫌い、だからすべて壊してあげる〜
アシュリーはグッと唇を噛んだ。


「俺こそ遅くなってすまない……やはり無理にでもアシュリーを連れてこの公爵邸を出ていればこんなことには!」

「ロイスお兄様は何も悪くありませんわ。気に病まないでください」


ロイスとクララだけはアシュリーの幸せを考えてくれてくれている。
そのおかげでアシュリーは正気を保ってここに立っていられた。
でももう守られているだけではいけないと、そう強く思うのだ。

(二人は特別だわ……ロイスお兄様とクララだけは絶対にわたくしが幸せにしてみせる)

決意を胸に静かに手を合わせていると、ロイスが気まずそうに顔を曇らせた。


「アシュリー、聞いてくれ」

「なんでしょうか?」

「実はバートはペイスリーブ王国の王太子、ギルバート殿下だったんだ」

「……え?」


アシュリーは口元を押さえて大きく目を見開いた。


「変装してアシュリーに会うことはギルバート殿下の希望だった。色々と事情があって互いの目的のために動いているんだよ」

「……」

「騙すような形になってすまない」


アシュリーの手のひらの裏の唇には弧を描いていた。

(そう……ギルバートはペイスリーブ王国の王太子)
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