捨てられた聖女の復讐〜みんな大っ嫌い、だからすべて壊してあげる〜
しかしギルバートから渡されたのは俯きながら不気味に咲き誇る黒百合。
まるで『良い子から悪い子になる』と言ったアシュリーの言葉を尊重するようなプレゼントに歓喜していた。


「とっても、とっても嬉しいですわ……!ありがとうございます。ギルバート殿下」

「気に入ってくれたようで嬉しいよ」

「もちろんです。お気遣いありがとうございます」


黒百合を見てアシュリーは目を輝かせた。
クララに花を部屋に飾るようにお願いする。
アシュリーは大胆にもギルバートにゆっくりと抱きついた。
いつも慎ましいアシュリーの姿とはかけ離れた行動にロイスやクララは言葉も出ないようだ。

しかしこれも必要な行動なのだ。
アシュリーは今日からギルバートのものとなる。
逞しい胸板に体を預けながら瞼を閉じた。
心臓が脈打つ音が冷たい体温にアシュリーの心が落ち着いていく。
ロイスがすぐにクララに目配せする。


「ギルバート殿下、すぐに温かいお茶をお持ちいたします。少々お待ちくださいませ」


クララは花束を持ってから深く腰を折る。


「お茶はいいよ。それよりもアシュリーのことを優先してくれ」

「かしこまりました」
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